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CLUTCH Journal

ジャーナル

2016.01.28

数奇な運命をたどった英国時計ブランドSMITHSの魅力に迫る。

Book Vintage Products

1月28日に発売した別冊Lightning『英国プロダクツ』。英国で生まれたプロダクツを中心に、そこから派生したカルチャー、英国ならではの素材の秘密、日本で楽しめる英国ショップなど英国にまつわるキーワードを1冊に凝縮。しかも、本場英国で暮らす人たちの意見に耳を傾けて作ったので、日本だけの取材では知ることができなかったレ アな感覚や、プロダクツも紹介する。925円+税
 
 
巻頭企画の「LIFE WITH BRITISH PRODUCTS」では、朝から晩までを8つのシーンに分け、それぞれで活躍する英国プロダクツを紹介している。

どのブランドも歴史があり、作りが良く、品がある。
良質なモノこそ毎日使ってほしいという思いから、コーディネイトは身近でカジュアルであることを意識した。
またブリティッシュヴィンテージを用いたのもポイント。取り入れ方をぜひ参考にしてみてほしい。
 
そのような中、ひときわ目をひいたのが、SMITHSのヴィンテージウォッチだ。
(『英国プロダクツ』P24掲載 Photo by Masahiro Nagata  永田雅裕)
 
SMITHSといえば、読者の方は英国車やバイクの計器メーカーとしてご存知だろう。
ところがSMITHSは、1851年に時計店として創業している。
 
そこからSMITHSの山あり谷ありな歴史が始まる。
1880年代に懐中時計を作り始め、1900年代には自動車の総合部品メーカーに。
20世紀前半はスイス・Longines社の高品質なムーブメントを用い、文字盤や一部のフラッグシップモデルを除いたケースまでもスイスで製作した。SMITHSのロゴのみ英国で付記されたと言われている。戦後は、 スイスの高級時計ブランド、Jaeger-LeCoultreから技術者を招き、完全英国製の時計作りに成功。
 
時計作りの本場、スイスの品質を宿した初期から、徐々に完全英国製を目指し、英国の時計ブランドとして立身できるよう努力を続けたSMITHS。
ところが世の中の多くの人はあくまで「時計はスイスが一番!」だ。なかでも英国人のSMITHSに対するイメージは、計器メーカーであったことから「質実剛健」にとどまった。時計にこだわる上流階級層が求め るラグジュアリー感において、SMITHSはスイスの大手ブランドに勝つことはできなかった。品質は彼らと変わらない最高水準であるのに、英国ブランドであることにこだわったばかりに……。
 
 
そして1960年代、日本企業によるクウォーツ革命が起き、SMITHSは1980年代に時計・計器事業から撤退。現在は医療
機器と航空機の電子機器を生産している。
 
時計は精密なのに、性格は”不器用”。そんなSMITHSに魅力を感じ、日本屈指の数のヴィンテージSMITHSコレクション・販売を行うショールームが千葉にある。WATCH GALLERY BIG BEARだ。



自宅の一室をショールームとしているオーナーの大熊氏は、根っからの英国好きだ。SMITHSの時計をはじめ、英国のヴィンテージ雑貨も多くコレクション。1929年製Autsin7を所有し、英国車をモチーフに取り入れた風景を描くイラストレーターとしても活躍している。

「本格的にSMITHSの時計にヴィンテージ価値が生まれる前は、英国車店のレジ横などで売られていることが多かったですね。私は最初に5本のヴィンテージSMITHSを買いました。状態はよくありませんでした。 実は子供の頃に、記念に買ってもらった時計を解体して壊してしまった経験がある私は、時計修理の虜でありながらトラウマでもあったのです。そんな”禁断の”時計修理をSMITHSで再チャレンジ。ベテラン 時計師に教えを受けながら、自分で解体し再度組み立ててみたのです。4本は失敗し、5本目に成功。再度組み立てられる、ということは元々の作りが良い証拠です。修理を前提に作られていない廉価モデルは、一度解 体したら組み立てられませんから。ちなみにSMITHSでは、DE LUXEのようなハイエンドラインの他に、EMPIREに代表されるウェールズの工場で低コストで作ったラインも展開していました。聞こえは悪いですが、高いモデルを買えない学生や若者のために、”はじめて持つSMITHS”として提案していたのです。その1本目でSMITHSを知り、いつか高級ラインを持てるようになってほしいという願いが込められていました。幅広い世代への知名度アップには大いに貢献したでしょうね。話は戻りますが、私が初めて修理に成功した運命のSMITHSですから、一層思い入れが強くなり、もっとSMITHSの魅力を広めよう! と思い10年前にここで取り扱いと 修理を始めました。特に修理は、SMITHSの時計作りの歴史を受け継いでいくような使命感がありますね」
1957年製DE LUXE。9金無垢ケース、17石、手巻式、外径31.8㎜。¥599,000_。SMITHSの計器パーツを製作していた子会社SMITHS MOTOR ACCESORIES社が、社員の退社祝いとして贈った1本。その印が裏面に刻印されている。DE LUXEのなかでもグレードが高く、コンディションはかなり良好。
 
ジュエリーをはじめとした英国のラグジュアリープロダクツブランドASPREYがSMITHSで製造した1本。1958年製、9金無垢ケース、17石、手巻き式、外径33.6㎜、箱付き。¥599,000_。繊細な文字盤のデザインに注目!
 
左/1960年代製ASTRAL。クロームメッキケース、手巻式、外径33.8㎜。¥39,900_。ASTRALはシンプルかつモダンなデザインとして発表されたシリーズで、現代においてもシーンを問わず使うことができる 右/1950年代製DE LUXE。金メッキケース、15石、手巻式、外径33.4㎜。¥59,900_。数字フォントやスモールセコンドなど、クラシックながら主張のあるフェイスが特徴。
 
デッドストックのアラーム時計。左から1950年代初期製¥162,000_、1960年代製¥59,900_、1960年代初期製¥75,600_。'50~'60年代にかけては、アラーム時計を使う上流階級層の豪華な住居に合わせ 、いまでは考えられないほど手の込んだデザインのものが多く見られる。ポップな箱のデザインには親近感がわく。
 
以上がWATCH GALLERY BIG BEARが誇るラインナップの一部。クラシックかつ主張があり、抜群の品質の腕時計や、部屋を彩ってくれる多彩なデザインのアラーム時計。これらひとつひとつから、SMITHSが時計作 りを通して積み上げた豊かなストーリーを感じ取ってみてほしい。お手頃価格モデルもあるので、初めてのヴィンテージウォッチ購入にもおすすめしたい。
 
さて、ここからはちょっとした裏話を。
SMITHS博士ともいえる大熊氏。そして旧い時計の独特な数字を眺めているだけで幸せな気分になれる筆者。
今回の取材は時間を忘れてSMITHS話に華を咲かせた。実は筆者、3年ほど前にロンドンのマーケットでSMITHSの時計を購入した。数字が剥落していること、動きが鈍いこと、ベルトを変える必要がある等の理由 で数年間机の中に眠っていたのだが、今回の取材を機に大熊氏に診てもらった。結果は……そのモデルが前述のEMPIREであることから、オーバーホールはしない方がイイそうだ。「オーバーホールした場合 は逆に壊れる可能性があります」とのこと……。マーケットで破格で買ったために高価なモデルではないだろうな、ということは事前に予想できていたが、修理も向いていないとなるとさすがに残念……。
 
というわけでオイルを注し、数字の修理をしていただき、手元に戻ってきたのがこちら。
EMPIREとはいえ、4分割された文字盤や数字表記など、非常にデザインが凝っている。あとはグッドなベルトを見つけて、SMITHSライフを始めようと思う。
 
SHOP DATA
WATCH GALLERY BIG BEAR
千葉県市原市五井5463-2
TEL 0436-25-1232
10AM~6PM(※完全予約制)
 
Text by CLUTCH Magazine  編集部
 

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